FRP防水とは

FRPは繊維強化プラスチックス(Fiberglass Reinfoced Plastics)の略称で、ガラス繊維などの強化材(補強材)で補強したプラスチックのことです。FRPは数々のプラスチックス材料の中でも最も耐衝撃性に強く、耐水性や成形性に優れた特性を有することから、船舶、水槽、自動車のボディパーツ、バスタブ、浄化槽、屋根材、ケミカルプラント、サーフボード、ヘルメットなどの成形品として、幅広く使用されています。このような優れたFRPの特性を応用し、最近では防水分野にも使用されるようになりました。住宅建築でFRP防水が採用されるようになってからは、木造住宅でもベランダが作られるようになり、現在木造住宅ではFRP防水が主流となっています。屋上防水で使用する場合は、軟質の樹脂を使用して地震などでも割れないようにしています。

FRP防水の特長

FRP防水は、液状の不飽和ポリエステル樹脂に硬化剤を加えて混合し、この混合物をガラス繊維などの補強材と組み合わせて一体にした塗膜防水です。母材となるコンクリートや、金属・木部の表面に密着することで、FRPの被覆防水層を形成します。防水層は軽量かつ強靭、耐熱性・耐食性・耐候性などに優れているという特長があります。また、樹脂の硬化速度が速いため1日ですべての工程を完了させることが可能なのも大きな特長の一つです。軟質の樹脂で現場施工され、空気と反応して硬化し、補強材と一体になって出来上がったFRP層は、継ぎ目のない優れた防水層をつくります。

FRP防水の一般的特長

1.露出仕様で防水層上の通常の歩行が可能である。
2.速硬化タイプなので、1日で施工を完了させることも可能である。
3.耐磨耗性に優れ、駐車場への適応性に優れる。
4.耐根性、耐土壌性に優れており、屋上緑化防水に最適である。
5.耐水・耐薬品性に優れているため、薬品槽、下水道施設など耐蝕性を要求される分野にも使用される。

FRP防水の施工工程

ここでは一例として、一般的な弾性FRP防水処理をコンクリート(モルタル)の上に行う場合の方法をご紹介します。

STEP1  下地処理

1:まず最初に下地を充分に乾燥させます。新しいコンクリートの場合にはアク抜きに3週間程度おきます。FRP樹脂は水分に触れると硬化せず、後の剥離、硬化不良等を引き起こす原因になる為、部分的な湿りについてもきちんとバーナー等で完全に乾燥させます(水分10%以下推奨)。

2:表面状態のチェックを行います。亀裂、剥離が無いか、特に立ち上がり部分と平面部の接点、ジョイント部分が有る場合は隙間、泥や水の溜まる箇所等をチェックしていきます。状態の悪い周辺部はゴムハンマー等で浮きあがりが無いか調べます。そしてチェック箇所にはカラーマジック等で下地に直接指示書きしておきます。

3:必要に応じてモルタルの塗り直しを行います。浮き上がりの激しい部分は撤去し、亀裂が激しい部分はサンダー等でV溝に広げ、新にモルタルの塗り直しをします。その他の不良箇所はプライマー塗布後、パテ等で補修します。

4:表面処理を行います。表面のゴミ、汚れ、凹凸、塗装等の表面処理部分、出ズミ入ズミR箇所等を皮スキ、ディスクサンダー等で削り平滑に仕上げます。仕上げが完了したら、作業時等に出た粉塵等をほうき、掃除機等で完全に清掃します。

STEP2  プライマー塗布

下地が完全に乾燥していることを確認した後、モルタル表面の吸い込みを見ながらローラー等でプライマーを均一に、充分に染み込ませるように塗布します。プライマーとは下地と防水剤を馴染ませる為の接着剤の様な物です。そしてプライマー塗布後、30分以上乾燥させます。

STEP3  補修

不良箇所、コーナー部、目地等にパテ等を充填し、凹凸が無いよう表面全体を平滑に補修します。

STEP4  FRP積層

1.仕様の再チェックを行います。作業仕様書等の配合比、m2当りの樹脂、ガラス繊維、硬化剤等の使用量の再確認を行います。

2.下塗りを行います。樹脂に規定量の硬化剤を混ぜて、ローラー等でムラ無く塗布していきます。表面の吸い込みが多い場合には、再度塗りこんでいきます。

3.FRP積層を行います。まず初めに立ち上がり部やコーナー部からガラス繊維を貼り、規定量の硬化剤を混ぜた樹脂をローラー等で含浸塗布していき、次に平面部の奥の方から順次同様にFRP積層していきます。ガラスマット白色のガラス繊維は、樹脂が含浸すると半透明に濡れていきますので、状態を確認し、混入した気泡を見落とさず脱泡しながら積層していきます。脱泡の際、脱泡ローラー等でガラスマットを押え過ぎると平滑性が損なわれますので、注意して優しく作業を進めていきます。またガラスマットの重ね巾は、50mm以上は取るようにし、端末は手で揉みほぐし、出来る限り重ね段が目立たない様に平滑に仕上げていきます。一般的な積層は2プライで強度が必要な箇所は3~4プライです。尚、水漏れを防ぐ為にガラス繊維は5cm程度重ねて積層していきます。

STEP5  サンディング処理

1.硬化後、積層部分が白くなっている部分や空気が入っている部分はカッター、サンダー等でくり抜き、再度積層します。

2.マット積層時の跳ね上がり、毛羽立、樹脂玉、マット重ね段等、表面の凹凸を拾ってペーパー、サンダー等で平滑に仕上げます。

3.今までの工程チェックを行い、気付いた個所の補修を行います。

STEP6  上塗処理

ガラスマット目を押える為、表面に樹脂をムラ無く塗布し表面をコーティングしていきます。既に表面調整作業済みなので、樹脂の表面平滑性に任せた自然な作業を心掛け、樹脂溜まり、樹脂ダレに注意します。

以上が一般的な弾性FRP防水処理の施工工程になりますが、実際にはFRP防水作業には、求められる要件別に様々な工法、資材があり、その選定や施工には多くの知識と経験が必要とされます。従って施工業者の技術レベルによっては同一仕様であっても仕上り耐用年数等に大きな差が生じます。